第3章 デートをしよう
「…ここ、ですか?」
ユーリは目の前の建物を見上げる
賑やかな街から少しはずれたところにそれはあった
入り口に松明がパチパチと音を立てて燃えている
しかも入り口には男が二人、まるで衛兵のように立っていた
「気に入らないか」
「いえ、そんなことは!ただ、なんだか高そうだなぁ、と…」
明らかに他の建物とは造りが違う
建物の周りに植えられた植物でさえ、めったに見ない珍しいものばかりだ
「あぁ、ここはよく貴族が使うらしい。ディーンもよくレイラと来ると言っていた」
「そうなんですか…だとしたら、やはりお高いんじゃ…」
「ユーリが気にする必要はない。普段からあまり金を使う機会が無いからな。こういうところで使うものなんだろう」
「えっ…あっ、シヴァ様」
先に店に入ってしまったシヴァを追う
入り口の衛兵らしき人は素通りだった
それどころかシヴァに小さく頭を下げていたようにも見える
「いらっしゃいませ」
入り口を抜けると、そこはすぐにカウンターがあった
お香が焚かれているのか、やけに甘い香りがする
灯りは赤い布で囲われており、カウンターを赤くぼんやりと照らしていた
なんだか別世界に迷いこんだ雰囲気だった
「準備をいたします。少々お待ちください」