第2章 魔女の逃亡
えっ?
ユーリは固まっていた
聞き間違いじゃないだろうか
混乱したユーリにシヴァは続けた
「一時間前にその姿は確認されている。そして誰もこの入り口から魔女が出ていくのを見ていない」
「…ということは」
「何らかの魔法を使って逃げ出した可能性がある。性転換の禁忌魔法を知っていたぐらいだ。他にも記録に無い何らかの魔法を使えたって不思議ではないだろう」
至って冷静なシヴァ
しかし、その眉間にはシワが深く刻まれている
どうやらユーリがここに来る前から機嫌が悪かったようだ
「魔女の行方は今確認中だ。だが、あまり良い報告は期待できないな」
「えっ…じゃぁ魔女が見つからなかったら私は…」
自分の体の事がわからないままだというのだろうか
体は男に戻るのか
また女になるのか
いつまでこの状態が続くのか、何もわからないままだ
「魔女が使った魔法については、本人もよくわかっていないようだった。仮に見つかったとしても有益な情報が聞き出せるとは思えないな」
「そ…そんな…」
絶望にも似た感情が込み上げた時、ドンっと背中を押される
突然の事に踏ん張りがきかず、ユーリはシヴァの胸に飛び込んでいた
反射的なのか、シヴァの腕がユーリを支えるように背に回される