第2章 魔女の逃亡
「えっ…えっ、あれっ!?」
確かにシヴァは出ていった筈だ
それなのにまだいるのは何故なのか
混乱し、それと同時に先ほどの自分の呟きが聞こえてしまったのではないかと焦り、顔が真っ赤になる
「シヴァ様…何で…」
気がつけばシヴァに抱き締められていた
背中に回されたたくましい腕が心地良い
シヴァは後ろ手にドアを閉めると更に鍵をかける
カチッと響いたその音が合図かのように、混乱しながらもユーリはシヴァの背に腕を回していた
「ユーリ」
顔を寄せられ、耳元で囁かれる
…あぁ、ダメ
嬉くておかしくなりそう
その声だけで腰が抜けそうだ
「シヴァ様…ずるいです。出ていったと…思ったのに…」
「あぁ。忘れ物に気づいてな。そしたら可愛い呟きが聞こえたんでね」
おでこをこつん、とぶつけるとシヴァはにやりと笑う
と同時にユーリは恥ずかしさで発狂しそうだった
聞かれていたのだ
「おい、逃げるなよ」
「い、嫌です…恥ずかしいっ」
じたばたしてもシヴァの腕は離してくれなかった
それどころか腕に込められた力が強くなる
力の差は歴然で、当然逃げられるわけがない
だが、何もせず抱き締められ続ける余裕がなく、照れ隠しからきた行動だった