第7章 奇跡はすぐに
そして食事を終えると、三人は店の前に立っていた
食事はシヴァのおごりだとわかると、魔女は追加注文して平らげたのだった
「じゃぁね。もう二度と会うことはないだろうがね」
魔女はやっと帰れるとため息を吐いた
しかし、シヴァの話はまだ終わっていなかったようだ
「改めて感謝する。これを受け取って欲しい」
そう言って魔女の手を掴むと、その手のひらに小さな包みを乗せる
「なんだい、これは……って!?」
魔女の目が大きく開かれる
包みの中には銀貨が五枚入っていた
平民が一生に稼ぐ額が銀貨五枚と言われているため、かなりの大金だ
「な、なんで…」
「それぐらいあれば永住権登録、出店登録ができるだろ。堂々と店を出せるってわけだ」
「そ、それでもお釣りがくるよ…」
「さぁな。後は好きにしろ。行くぞ、ユーリ」
シヴァはユーリの腰を抱き寄せ歩き出す
魔女はそんな二人の背を見送り、苦笑していた
「まったく…こんなはずじゃなかったんだがね…」
そう言ってローブの中にある杖に手を添えると、小さく呪文を唱える
それは誰にも聞かれることはなく、魔法となって杖の先が光ると、ゆっくり消えていった
魔女は二人が完全に見えなくなると、銀貨をローブに仕舞い、踵を返すのだった―――