第7章 奇跡はすぐに
「アンタが私の魔法の餌食になった奴だね。顔は覚えて無かったが…。まぁ、中途半端な魔法になったって聞いて…悪い事をしたと思ってるよ」
ふいっと目を反らしたのは魔女が先だった
しかし、ユーリは身を乗り出す
「そんな事ありません!」
「………は?」
魔女はまたしても驚いたように目を見開く
そんな魔女に構わずユーリは続けた
「確かにあんな魔法使われて最初は驚きました。朝には男になって、昼に女になる。びっくりしない方がおかしいです。でも…」
ユーリは姿勢を正すと魔女に告げた
「あなたのおかげで、私は今、とても幸せです」
「………し、幸せ…?」
「はいっ!」
魔女は自分の耳を疑った
勝手に魔法をかけ、しかもそれが完全なものではなかったにも関わらず、目の前の本人は幸せだと言い出したのだ
しかも満面の笑みで…
本当なら今すぐにでも逃げようとしていた気持ちは薄れ、魔女は小さくため息を吐く
「そうかい。そりゃ良かったね」
魔女はそれ以外の言葉が見つからず、まるで皮肉めいた言い方になってしまった
しかし、二人は気にしていないようだった
「俺も同じだ。だから魔女に会えたら礼がしたいと思っていてな」
「礼だって…?」
魔女になってお礼なんて一度も言われた事がない
魔女は眉間にシワを寄せた