第6章 女神への誓い
「すごい…素敵…」
馬車から降りたユーリは神殿を見上げて目を輝かせていた
目の前にそびえ立つのは少し茶色の混じった大理石で出来た神殿だ
建設されたのは千年以上前だという
思っていたより大きくはないが、美しいシンメトリーに、壁の装飾彫刻は迫力がある
どれもこれもが目を奪う美しさだった
街の喧騒から外れ、まるで別世界に来てしまったかのような感覚になる
優しく吹く風も、感じる花の香りも、さえずる鳥の歌声も、全てがユーリたちを歓迎してくれているようだった
ユーリが神殿に見とれていると、正面の扉が左右に開かれる
現れたのは少し背の低い老神父だった
たくわえたひげが白く伸び、貫禄を感じさせる
「ようこそ、シヴァ様、ユーリ様」
老人は小さく微笑むと頭を下げる
つられてユーリも頭を下げていた
「さて、お時間も惜しいでしょう。早速中へとお入り下さい」
老神父に促され中に入ると、そこは小さな円形の広間となっていた
そして、奥に続く扉が三つある
キョロキョロとしたユーリに、老神父は振り返って静かに告げた
「左右の扉に別々にお入りください。着替えを用意してあります。着替えていただいたらお二人で真ん中の扉へとお進みください。中でアヌー女神像がお二人の愛の誓いを見届けてくれるでしょう」