第6章 女神への誓い
「なにぼーっとしてるのよ。シヴァ様がお待ちよ。早くしないと機嫌を損ねちゃうかもしれないわ」
レイラにトンと背中を押され、ユーリは慌てて政務室へ続くドアを開けた
「シ、シヴァ様、お待たせしました」
特別な台詞では無いが、何故か胸がドキドキした
いつも一緒にいるのに、なんでこんなにドキドキするの…
ユーリは高鳴る胸を押さえてシヴァを見つめる
「あぁ。もうそんな時間か。じゃぁ、そろそろ行くか」
「はいっ」
立ち上がったシヴァに腕を絡める
とても幸せな時間だ
「あ、ユーリ。これ、忘れないで」
そう言ってレイラが差し出したのは日傘だった
最近は日差しがとても強くなっている
貴族は日焼けが厳禁、とのことだが…ユーリは今まで、訓練の記録のために真夏でも外にいるのが当たり前だった
もちろん、そんなユーリの言い訳をレイラが許すはずもなく、強制的に日傘を使うように言われている
貴族のお嬢様が使うような可愛らしいフリルの付いた日傘
ユーリは最初は面倒で抵抗があったものの、今ではなんとか慣れ始めていた
「ありがとう、レイラ。行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい」
カツンとヒールを鳴らし、ユーリはレイラに手を振る
踵の高い細身のヒールも、淡い色のワンピースも、今ではすっかり馴染んでいた