第5章 結婚式の夜
とある夜――
ぼんやりとユーリは月を見上げていた
最近はシヴァの帰りが遅い
結婚式に陛下ら王族が多く出席されるため、どう警備するか何度も計画を練り直しているのだとか
「今日も遅いのかな…」
ぽっかりと浮かぶ月
空には雲ひとつ無く、夜の城を明るく照らしている
「結婚かぁ…」
ぽつりと呟く
ユーリの心に浮かぶのは『羨ましい』という感情だった
レイラとディーンは幼い頃からの許嫁であり、二人はやっと時期がきた、という感覚らしい
もちろん二人は愛し合っており、誰もが認めるカップルだった
そんな二人を羨ましいと思うようになったのは最近のことだ
ユーリはどんなにシヴァを愛しても結婚は許されていない
体が女になり、シヴァを愛し、さらにシヴァにも愛してもらっている
それだけで幸せだと思った
シヴァに抱かれる度、嬉しくて満たされていたのだが…
「私ってばわがまま…」
シヴァの妻という立場に憧れてしまっている
何度目かのため息をついたとき、ドアがカチャッと音を立てて開けられる
やっと帰って来たシヴァに、ユーリは憂いを消して笑顔を見せた