第10章 本当に好きな人。【求婚篇④】
沖田side
『わ、わ、忘れて下さいぃぃぃいい!』
華時はあたふたしながら自分の顔を両手で隠した。
俺は恥ずかしさ…というよりは、華時がいつもの元気を取り戻したという安堵が大きかった。
あいつは少しいつもの調子になると最後を同じ言葉で連発する癖があった。
お腹すいたぁぁぁぁあ!とか
もういやだぁぁぁぁあ!とか
うるさいぃぃぃいい!!とかな。
『た、沖田隊長…?』
華時は不思議そうに俺を見つめた。
それがなぜか可愛かった。
沖田「何でもないでさぁ…」
俺はめをそらした。
『……沖田隊長、私は今でもゆーくんの事、好きです。』
沖田「……」
『でも、その好きとあるお方の好き、全然違うってこと。最近わかりました。』
沖田「俺は許さねぇ…」
『えっ!?』
沖田「……華時が他の男と歩いてるのは許さねぇ…」
『沖田隊長……』
すると目を細めて華時は考えた。
すると、あっ、なるほど、と呟く
『真選組局中法度にありましたよね?あれ?恋愛禁止でしたっけ?それなら近藤さん…?』
ぽかんと俺は口をあける。
こいつの天然さには負ける。
『沖田隊長、お話聞いてくれてありがとうございました。』
これからも聞いていたい。
そんな甘い事は恥ずかしく言えず、頷くことしか出来なかった。
そんな時。
神山「副隊長!!!例のヤツがっ!!!」
『え?』
神山が息を切らしながら入ってきた。
『例の…ヤツ……?』
神山「……最後くらい、幼なじみが一緒にいてあげて下さいっ……!」
『幼なじみ…?最後……?……ゆーくん!!!!!』
華時は病室を飛び出した。
バタバタと足音が聞こえる。
俺は追いかけなかった。
沖田「ったく、かなわねぇや。」
神山「僕もですよ、大変でした。」
神山と俺は笑みを浮かべて、ふたりで歌舞伎町を見下ろした。
本当に、かなわねぇや。