第10章 本当に好きな人。【求婚篇④】
沖田side
目が覚めるとそこはいつもの歌舞伎町の公立病院の一部の病室だった。
周りに人はいねぇ。
何も感じず、俺はただぼっーとしていた。
そこではっと我にかえり、ベッドから体を起こし病室の窓からいつもの歌舞伎町を見た。
そこにはいつもの変わらない歌舞伎町で、ちょっと安心した。
甘味屋にはチャイナと旦那がみたらし団子を食ってるのが見えた。
そして、俺は大事なヤツの存在に気がついた。
華時は!?
俺が最後の記憶にあったのは華時が涙を流したところだ。それからは全く記憶がない。
俺は何故か華時がどこにいるかも分からねぇのに病室を出た。
たったった…
俺の足音が長い長い廊下に響く。
そして、ある病室の前に人影が見えた。
それは…
沖田「神山!!!!!」
神山「お、沖田隊長!!!」
一番隊の神山だった。いつもとのデカイ声はなくてカチャリとメガネを整えてまた病室のドアを見た。
沖田「…何してるんでぃ、早く入りな。」
神山「いえ、ここは例のヤツのところです。」
沖田「…雄心…か。」
そしてよく耳をすませる。
…泣き声が聞こえた。
沖田「この中に華時もいやすか?」
神山「…はい。」
神山は俺に笑って話はじめた。
神山「…副隊長、きっと雄心の事が好きだったんですよ。」
は…?
信じられねぇ言葉が聞こえた。
華時があいつを…?あいつが華時に好意を持っているのは知っている。
華時が…?
神山「伝えられない気持ち、持ってたんですよ。」
沖田「今もあいつの事が好きだってことでぃ?」
神山「いいえ、違います。いまの副隊長は別のお方に憧れを持っています。」
は…?
華時は今、好きなヤツがいる…?
俺は頭が混乱して頭を抱えた。
神山「病み上がりですし、もうちょっと休んだらどうです?隊長。」
沖田「……」
その瞬間。
ガラリ。
病室のドアがあいた。
そこには、目を真っ赤にした華時がいた。
『沖田隊長、ご無事で良かったです。』
いつもと変わらない微笑みで俺を見つめてきた。