第1章 始まりは突然に
廊下に出る前に人が居ないのを確認し、部屋への道を急ぐ。
下着を付けない習慣もあるときくが、私には向かないなと痛感する。
こんなにスースーしていては、落ち着かない。
部屋へ戻る途中で、先程のマネさんとクロの声が聞こえてきたので、慌てて近くの部屋へ隠れてしまった。
「黒尾くん? 彼女いないってホント?」
「ん? あぁ……まぁ、彼女とかめんどくさいし?」
「そっかー、私、遊びでも全然構わないけど……どう?」
「そんな誘われ方したら、断るのもったいないっしょ?」
2人の声が遠ざかって行く中で、何故だか少し落ち込んでいる自分がいた。
別に、クロの事を恋愛対象として見たことは全くなかった。
向こうも多分、そんなふうには思っていないはず。
だけどクロの「彼女とかめんどくさい」という言葉を聞いて、胸の当たりがモヤモヤしていた。