第1章 始まりは突然に
「灯台もと暗しって言うじゃん? なんつーか、いつも一緒居たから気付かなかったって言うか……木兎に盗られたと思ったら、無性に愛おしくなった」
「なに……言ってんの……? 意味、わかんないし……」
そうだ、きっとこれはクロの遊びの常套句なんだ。
いつも遊ぶ度にこうやって女の子に甘い言葉を並べて、相手がその気になったらポイ……だって────
「彼女とかめんどくさいんでしょ……?」
数時間前にクロが言ってた言葉。
あのセリフに嘘偽りはないはず。
「そう……」
ほら。
「思ってた。でも、は特別」
特別なんて、嘘。
私も所詮は、ただの女なんでしょ──