第1章 お彼岸の1日
さっそくひとつ齧りながら去って行く、チャイナ娘の背中が町に消えて行くのを見てから、パトロールを再開する。
「彼岸か…」
秋の雨は、人を感傷的にするらしい。
俺は、アイツが言うなれば彼岸へ行った日の事を思い出した。
今朝、総悟にやられたタバスコ並みに辛い煎餅を齧りながら思ったのは、ゆっくり行けという事だった。
あの日は、今日と違い良く晴れて星が綺麗な夜だった。人は死んだら星になるだのという、子供じみた戯れ言を信じちゃいねーが、それでもこの町から星空へ昇るなら、急がずに、ゆらゆらと漂う紫煙のごとく昇れば良いと思った。
ドS星の王子である弟も、あの時はまだ泣いていたのだから。
いや、まったく、何でこんな事を思ってしまったのか。
舌打ちをして、タバコを揉み消す。
アイツの事など。
「知ったこっちゃねーのに」
呟いた口の中は、なんだかまだ少し、辛い気がした。