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「天つ風」「降る雪よ」

第1章 お彼岸の1日


屯所に帰ると、山崎と総悟が何か話し合っていた。
というか総悟、パトロール終わるの早くないか?そう思って聞くと、
「雨なんで」
という舐めきった答えが返ってきた。
「ふざけんじゃねぇ」
と怒鳴ったついでに、隣の山崎を睨んでやると、ヤツは一瞬怯えた顔をしたが、すぐにヘラリと笑った。
「副長、コタツ出すのは早いですかねぇ」
などと言うので、適当に相槌を打つ。
「今年は寒くなるのが早いみたいですね。富士山も初冠雪ですって。9月に観測されるのは6年ぶりらしいですよ。雪降るのも早いですかねぇ」
勝手に話し続ける山崎を無視し、部屋に戻る。
なんとなくテレビを付けると、ちょうど天気予報をやっていた。
万事屋が気に入っている結野アナが天気図の前に立ち、
「今年は雪が降るのが早いと思われます。昨年に続き、大雪も予想されるので、雪かきグッズなどの用意は早めにしましょう」
と話している。
雪か。江戸で早いなら、武州はもっと早く降るのだろう。
俺はタバコに火を点け、深々と吸った。
アイツは寒いの、苦手だっただろうか。
今日は本当に、感傷的になる1日だ。
ガラにもねぇ。
きっと、朝のタバスコのせいだ。
後で総悟をもう一度叱っておこう。
吐き出す紫煙に紛れ、呟いてみる。
「雪か…あんま降るんじゃねーよ。寒がるだろうから」
いや、まぁ、別に、アイツの事なんぞ。
知ったこっちゃねーんだけど。
口の中は、やっぱりまだ少し、辛い気がした。
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