第1章 ~ATOBE KEIGO~
部活も終わり、帰る準備をしていると、急に呼ばれ振り返る
「跡部くん、何?」
「明日は休日で部活も休みだが、予定は?」
「予定?特にないけど…久しぶりだしゆっくりしようかなーって」
「この後は?」
「帰るだけだけど?」
「そうか。なら都合がいい」
そう言うと、跡部くんは私の腕を掴み歩き出した
「え?何?ちょっと跡部くん!?」
「いーから付き合え」
グイグイと引っ張られるように門まで連れていかれると、半ば無理やり停まっていたリムジンに乗せられる
「出せ」
「ち…ちょっと!!…ええっ!?」
跡部くんの一声で走りだしたリムジンが、どんどん学校から遠ざかっていった
「………世間ではこういうのって拉致っていうんだけど」
少しむくれて跡部くんを見やるも、跡部くんは涼しい顔をしていて。私は小さく息を吐くと、柔らかい座席にキチンと座り直した
「急に大人しくなったな」
「だって騒いだって降ろしてくれなさそうだし」
「解ってんじゃねぇか」
ククッと笑う跡部くんを軽く睨むと、私は視線を外へと移した
「…ねぇ、どこに行くの?」
「俺の家だ」
「………何で私が」
「…着いてみればわかる」
「そう、ですか…」
私は何を訊いてもはぐらかされそうな気がして、それ以上は口を噤んだ
(自分の目で見た方が早そうだし、それに…)
何か訳がありそうな気がして、それ以上は訊けなかった
でも…
ちゃんと訊いておけばよかったと後悔した