第1章 ~ATOBE KEIGO~
それから景吾は沢山の客人との対応に追われ、気が付けばもう夜になっていた
「ったく…いい加減帰れよ」
俺の思わず出てしまった言葉は誰にも気付かれることなく、客達は楽しそうに談笑している
自分が主役でなかったら、サッサとお開きにするのだが今日ばかりはそうはいかない
俺は息を付くと辺りを見渡すも、の姿は見えない
(…最初に言っておいて正解だったな)
俺はに、疲れたらいつでも帰っていいと言っておいた
(何時間も1人にさせたからな…)
悪いことをした。そう思いつつも、少し残念に思う自分もいる
初めての誕生日を祝って欲しくて無理やりこのパーティーに誘った
「(少しでも二人になれたらと思っていたが…)甘かったな」
目を細めて遠くを眺めていると、突然会場の照明が落とされる
そしてバースデーソングと共にケーキがロウソクを灯しながら運ばれてきた
これが運ばれてきたってコトは、漸く最後か…
毎年恒例のイベント
ロウソクを吹き消した後、客の一人一人にケーキを手渡し皆で食す
これで終わりだ
手早くやっても1時間はかかる
帰っていてくれてよかったかもしれねぇな
俺はのコトを思いながらロウソクを吹き消す
拍手が鳴る中、ケーキが下げられていく
「配らねぇのか」
台車を押しているミカエルを引き止めると、ミカエルは振り返り姿勢を正す
「景吾坊っちゃん、今年は坊っちゃんの分はございません」
「アーン?どういうことだ」
眉を顰めるも、ミカエルは気にする様子もなく続ける
「後は私達で行いますので坊っちゃんは早くお部屋にお戻り下さい。…子供は早くお休みになりませんと」
「―――――!! 」
そう言って柔かに微笑むミカエルに俺は少し目を見開くと、辺りを見渡す
すると、他の使用人達も同様に微笑んでいて
「お前らまさか…」
「はい?」
何のことだと言わんばかりの顔に、段々と確信が湧いてくる
「…ならそうさせてもらう」
「畏まりました。ごゆっくり…」
頭を下げるミカエルに、俺はフッと笑みを浮かべると足早に会場を後にした
(ごゆっくり…お二人の時間をお過ごし下さい)
ミカエルは心の中で呟くと、穏やかに微笑んだ