第1章 ~ATOBE KEIGO~
部室
景吾は濡れたシャツを脱ぐと乾燥機にかける
「…ありがとう」
私は壁に凭れながらポツリと呟いた
「ああ」
素っ気ない返事だったけど、前みたいにトゲトゲしさは無く、私は静かに微笑んだ
今まで感じた蟠りが嘘のように消え、嬉しさに浸っていると、
「…悪かった」
突然の内容に目を丸くする
「…別にいいよ。気にしてないし(本当はスゴく気にしてたけど)」
嫌いにならないでってワーワー騒いだことに自己嫌悪を感じる
「当たり前だ」
「…は?」
「お前に怒る理由はねぇ」
「何それ…」
「俺は俺の失敗を詫びただけだからな。元はと言えばお前が原因だろうが」
「まあ、ね。何か釈然としないけど…でもこれは私の問題だし景吾を巻き込むわけには…」
「おい、お前は俺様を誰だと思ってんだ」
私の言葉を遮った景吾の顔はいつもの様に自信に満ち溢れていて
「(いつもの景吾だ…)誰って…氷帝の偉そうな部長様でしょ?」
「余計なモンばっか付けやがって…まぁいい」
景吾は私の前に立つと、フッと笑みを浮かべた
「俺様が氷帝の部長なら、お前は俺様の部員だろうが。それなら黙って可愛がられていればいいんだよバーカ」
「っ…………」
言い方は乱暴なのに酷く優しく響く
私はコクンと頷いた
「やけに素直じゃねぇの」
「だって…可愛がられてって言った…」
私は気恥ずかしくなって視線を逸らす
そんな私の頭を景吾は優しく撫でてくれた
「それに…誰が嫌いになんてなるかよ」
「ぇ…」
その言葉に顔を上げると、真剣な表情をして私を見つめている
その表情にドクンと心臓が高鳴った