第1章 ~ATOBE KEIGO~
「きゃっ…!?」
咄嗟に目を瞑り、衝撃を覚悟するも一向にやってこない
「………?」
そっと目を開けると、跡部くんの顔が目の前に広がる
「ったく…危ねぇだろうが」
私が倒れる前に掴んでくれたのだろう。体をしっかりと抱きとめられている
「ご、ごめんなさい…」
私は跡部くんから離れようと胸を押すも、ビクともしない
「跡部くん離して…」
「景吾だ」
「っ………」
耳元で呟かれた声に身を捩る
もうなんなのよ…
さっきのキスといい、今といい…この人完全に面白がってる!!!
「ほら、呼べよ」
「…呼んだら離してくれる?」
「どうだかな…呼んでみろよ」
何か誘導尋問というか、言いなりになってる気がして納得いかないが、離してもらわないと困る
私は溜息を付くと、顔を上げた
「景吾…」
景吾は満足そうに口角を上げると、漸く体を離してくれた
「…何か大人っぽいと思ったのに、やっぱり子供なんだ」
「アーン?当たり前だろ」
何故か私はその一言に安心した
大人びて見えるけど、それは大人の世界にいなければいけないからで、本当は対等に見て欲しいんじゃないかなって思ったから
「…帰るね?子供はもう寝なきゃ」
「…ああ」
その後、着替えたは用意してもらった車に乗り込んだ
「美味しい料理ごちそうさまでした」
「またいつでも食わせてやるよ」
「ありがと♪じゃあ…おやすみなさい」
ニコッと笑うと、滑る様に車が発進した
無理やり引っ張ってきたのに、強引にキスしたのに、そのコトを忘れたみてぇにもう笑ってやがる
「よくもまぁコロコロと表情が変わるもんだ…」
走り去る車を見つめると、景吾は屋敷へと入っていく
その表情は何故か嬉しそうに見えた
見てて飽きねぇ