第5章 抱き続ける諦念と愛惜の想い
潤の仕事ぶりは、とても見習いとは思えない程良く、智は潤が枝を組んでは紐で結える姿に、感嘆の声を上げ続けた。
その度に潤は照れ臭そうに笑い、顔を赤らめた。
見習いとはいえ、昌弘の代わりを務められる程、大工の腕が立つ潤だけに、鳥籠一つ作るくらい造作のないこと…と思わなくもないが、自分の慕っている相手に言われるとなれば、それはまた格別のものとなる。
「よし、これで完成だ」
潤は最後の枝を結えると、出来上がった籠を智の前で下げて見せた。
「まあ、この籠が本当にあの小枝と紐から…?」
しげしげと籠を眺め見る智に、潤の恥ずかしさが募る。
「そ、そんなに見んじゃねぇよ。粗が目立つだろ」
潤は照れ臭そうに、でもどこか嬉しそうに頭を掻いた。
そして、小さな扉を開けると、智に雀を籠に入れるよう促した。
「さ、お入りなさい」
智は優しく雀に語りかけながら、手ごと籠の中に雀を入れる。
すると、小さな雀は、籠に入った途端に羽を羽ばたかせ、智の手を離れた。
その隙に智はさっと手を引き、潤は雀が逃げ出さないよう、小さな扉を閉めた。
「どうでぃ、喜んでるか?」
「ええ、とっても」
「そっか、そいつぁ作った甲斐があるってもんだ」
潤はどこか誇らしげに目を細めると、籠の中の雀に指の先で触れた。