第5章 抱き続ける諦念と愛惜の想い
頭を下げ続ける潤…
その時、「まあ…」と智が驚いたような声を上げ、潤の頭にそっと手を翳した。
そして、とても男とは思えない白く細い指を口元に宛てると、「動かないで…」と潤の耳元に囁いた。
何事かと顔を上げようとした潤だったが、動くなと言われてしまってはそれも出来ず…
ただじっと身体を眺屈めたまま、目だけをきょろきょろと動かした。
が…
「お、おい、おいらの頭がなんだってんだぃ」
流石に理由も分からず、ましてや身動きも取れないとなれば、不審感ばかりが募って行くのは当然のことだ。
ところが、智は潤の不審を拭うこともせず、更に頭の上に手を伸ばす。
そして…
「まあ、なんて愛らしいこと…。ほら」
頭を下げたままの潤の前に、両手を差し出した。
そこには小さな雀が、嘴(くちばし)を開けたり閉じたりしながら、智の手のひらを啄んでいて…
「ふふ、擽ったい」
雀が逃げ出さないよう、両手で包む智が肩を揺らした。
そして両手を自身の目の高さまで持ち上げると、雀と目線を合わせるようにして首を傾げた。
「へぇ、雀ってぇのは人には懐かないって聞いたことがあるけど、あんたは特別なんだな」
「ええ、お話だって出来るんですよ」
目を丸くする潤に、智は自慢げに笑って見せた。