第5章 抱き続ける諦念と愛惜の想い
もしや、お気に召さなかったのだろうか…
智の描いた絵図を真剣な、そして難しい表情で見下ろす潤に、智の不安が募り…
「あ、あのっ…、お気に召さなかったのでしたら、また後日にでも…」
とうとう思い余った智は、潤の手から絵図を取り返そうと、手を伸ばした。
ところが…
「まるで生きてるみてぇだ…。なぁ、父ちゃん」
潤はぽつりと呟くと、満面の笑みを昌弘に向けた。
「では、あの…」
「ああ、気に入った。これで頼むよ」
「本当に?」
潤からの嬉しい言葉に、智は全身で喜びを表すかのように顔を綻ばせ、そして心底ほっとしたようにふっと息を吐き出した。
「おいら、こんな風神さんと雷神さんを、見たことがねぇ」
半紙を自然の光に透かし、まるでうっとりとするように、潤が目を細めた。
「なんて言うかよぉ、おいらの知ってる風神さんと雷神さんって言ったら、鬼みてぇな恐ろしい顔してるっていうかよ…」
「ええ、私も最初はそう思っていました。でも良く目を凝らしてみると、とても愛らしいお顔をされていて…」
智の言うように、智の描いた風神と雷神の絵図は、一見すれば鬼のように恐ろしい顔をしているが、どこか憎めない…愛嬌さえ感じられる。
そして美しさも…