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T・A・T・O・O ー彫り師ー【気象系BL】

第5章 抱き続ける諦念と愛惜の想い


「お水をどうぞ」

智が咳き込む昌弘に水を汲んだ茶碗を差し出す。

昌弘は茶碗を受け取ると、一気に水を飲み干し、空になった茶碗を茶盆に置いた。

「お風邪だとお聞きしましたが…」
「いやぁ、大したことはねぇんだけどよ、この歳になると、中々良くならなくていけねぇや…」

再びわざとらしく咳き込む昌弘を、潤も…そして智も心配そうに覗き込む。

そこへ丁度襖が開き、漸く翔が顔を見せた。

「待たせてしまって、申し訳なかったね」

翔は史机の前に座すると、軽く頭を下げた。

そして智に目配せをすると、智は翔の意を察したように土間へと降り、今度は三つの湯呑みを載せた茶盆を運んだ。

湯呑みを一つ一つそれぞれの前に置き、翔の隣に座した智は、少しだけ緊張した面持ちで翔の顔を横目でちらりと見た。

すると翔は史机の引き出しから一枚の半紙を取り出し、昌弘と潤の前にすっと差し出した。

「これ…は…?」
「この絵図は智が描いたものでね…」
「智坊…が…?」

言われて昌弘は半紙を手に取り、そこに描かれている絵図を、まじまじと見た。

「こいつぁすげぇ…」

思わず感嘆の声を漏らす昌弘。

その様子に、智はそっと胸を撫で下ろし、ふと潤の方へと視線を向けた。
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