第5章 抱き続ける諦念と愛惜の想い
「ったく、お前ぇって奴ぁ…」
小さな溜息を一つ落とし、昌弘が観念したように顔を上げた。
そして細めた目で潤を見上げた。
「一度言い出したら、梃子(てこ)でも動きゃしねぇんだからよ…」
「じゃ、じゃあ…」
「ああ、お前ぇの身体だ。好きにしやがれ」
途端に表情を綻ばせる潤に、昌弘は畳の上に落ちていた半纏を手渡した。
「でもよぉ、一つだけ約束してくれねぇか…」
「約…束…?」
一瞬首を傾げかけた潤だったが、昌弘がどんな条件を出して来ようと、全て受け入れるつもりで頷いた。
「お前ぇが餓鬼の頃から智坊に惚れてることは、俺も知ってる。でもよぉ、いくら女みてぇななりはしてても、智坊は男だ」
「ああ、それがどうしたってんだぃ…」
初めこそ、その身のこなしや見た目から、女と見間違った潤だが、翔や昌弘から男だと聞かされ、驚きはしたものの、潤はすんなりとその事実を受け入れた。
だから改めて言われるまでもないこと、そう潤は思っていた。
「何があっても間違いは起こすんじゃねぇぞ?
いいな?」
「間違いってなんでぃ…」
昌弘の真意を測りかねた潤は、益々困惑の色を濃くし、怪訝そうに眉間に皺を寄せた。