第4章 二つの神に宿さるる生命
「智…?」
項垂れる智の肩に触れようと伸ばした手を、智はぴしゃりと払い除ける。
「一体どうしたと言うんだ?」
まさか翔の描いた絵に、智が強い衝撃を受けていることなど知らない翔は、頻りに首を傾げる。
「お師匠さんは…、私のこのような姿…嫌じゃないのですか?」
「何故そう思う?」
「だってこれ程淫らで、浅ましい姿…、私は嫌です」
智は両手で顔を覆うと、激しく頭を振り、長い髪を揺らした。
「浅ましい…か…」
その様子に、翔は小さく息を吐き出すと、再び拒まれるのを承知で、智の震える肩を抱きしめた。
「私はそうは思わない」
「嘘っ…」
「お前は美しいよ」
「嘘…、私は美しくなんか…」
このようなはしたない姿、美しくなどない。
「この世に、お前程美しく、清らかなものはどこにもありはしないよ」
翔は智の肩を揺らし、顔を覆う両手をそっと剥がした。
「どのような姿であろうと、私はお前を愛しているよ」
「お師匠…さん…」
顔を覗き込まれ、泣き顔を赤く染めた智は、羞恥のあまり顔を背けてしまう。
「私は美しいしと思ったから描いた。それは許されぬことか?」
「そうではありません。私はただ…」
翔の言葉に、一瞬は顔を翔に向けた智だったが、やはり真っ直ぐに目が見られず、顔を背けてしまった。