第4章 二つの神に宿さるる生命
翔に諭され漸く気を落ち着けた智は、翔の肩に両腕を回し、欲に満ちた視線を翔に向けた。
ところが翔は苦笑してから、尚も絡み付いてくる智を引き剥がした。
「これこれ、そう盛るもんじゃないよ」
「だってお師匠さんが悪い…」
艶っぽく瞼を僅かに伏せ、紅を引いたような赤い唇を微かに開くその様子に、翔が欲を感じないわけではない。
だが今は…
「分かった。ただし、腹ごしらえが先だ」
買い付けから戻ってからというもの、急な来客やら何やらで忙しくしていたため、智が煎れた茶を最後に、それきり何も口にしていない。
出来ることなら、色欲よりも食欲を優先したいところだが…
「あら、お忘れですか? お師匠さんの夕餉は抜きと、先程申し上げた筈ですが?」
「ほぉ…、ならばお前を食うが、それでも良いのか?」
「ええ、食うて下さい。私を存分に…」
智の、幼さの残る面立ちの中に見え隠れする色香には、いくら翔とてそう勝てるわけがない。
「あっ…」
智の着物の襟元から手を差し込むと、迷うことなく胸の尖りを探り当て、手のひらで転がした。
そして手のひらに感じる感触に変化が生じ始めた頃…
「さて、ここはどのような味か…」
翔は智の着物の両襟を掴むと、一息に襟を開き、露になった白い肌に舌を這わせた。