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T・A・T・O・O ー彫り師ー【気象系BL】

第4章 二つの神に宿さるる生命


翔の問いかけに、智はこくりと頷くと、あまり見せたことのなり不安気な目を翔に向けた。

「お師匠さんは、初めて人様の肌に絵図を彫った時、怖くはなかったのですか?」
「それは私だって怖かったよ」

言いながら翔は開け放たれた襖の向こうに見える、道具の数々が並んだ棚に目を向けた。

それはそれは遠い目をして…

「だがな、智。人の肌に針を刺し、墨を入れることを恐れない人間が、この世にどれだけいる?」

まるで幼子に語りかけるような口調で諭し、自身のすっかり固くなった手を智に向けると、少しだけ表情を引き締めた。

「今でも…怖いですか?」
「ああ、今でも怖いよ。一つ間違えば、全てが台無しになってしまうからね」

それは絵図だけではない、翔に身を委ねた人も、そして彫り師として十分二名を馳せた翔自身の人生すら、台無しにしてしまうことだって無きにしも非ずだ。

「だからこそ、より多くの修行と経験を積むことが大事なんだよ」

言い聞かせるように智の背を撫でてやりながら、翔は「分かるな」と優しく微笑み掛ける。

「わたしに出来ますか?」
「ああ、お前なら…」

翔はかねてよりずっと思っていた、もし自分を超える彫り師が現れるのだとしたら、それは智に違いないと。

智が描く絵図を初めて目にしたその時から、ずっと…
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