• テキストサイズ

T・A・T・O・O ー彫り師ー【気象系BL】

第3章 呼び覚まされる往の記憶


「良いんじゃねぇか?」

昌弘は然程考えるまでなく、答えを出した。

勿論、簡単に答えが出せたわけではない。
そこには、昌弘なりにちゃんとした理由があってのことだ。

「俺ぁな、智坊が餓鬼の頃から知ってっけど、智坊の描く絵図は、そりゃ大したもんなんだ」

事実、幼い頃の智には、翔の仕事場だけが遊び場で、半紙と筆さえ与えておけば、時間も忘れてえかきに没頭することも少なくはなかった。

それこそ寝食すらも忘れる程に…

智自身、絵を描くことは好きで、最初こそ翔の見よう見まねではあったが、そのうち独自の
世界観を絵で表現するまでになった。

その実力は、昌弘が言うまでもなく、翔が一番
良く知っている。

その翔が智をと言うのだから、昌弘にとっては断る理由がない。

「それにな、俺の背中に初めて紋々入れたのは、他でもねぇ、ここにいる翔の兄貴なんだよ」
「そう…なのか?」

潤が驚いた様子で翔を見ると、翔は少しだけはにかんだように笑い、それからこくりと頷た。

「そうでしたね、私が初めて背中を借りたのは、昌弘さんでしたね」
「その頃の兄貴ときたら、今とは比べもんにならねぇくらい、酷でぇもんでな…」

当時のことを思い返しているのだろう、昌弘は時おり笑いを堪えながら話し出した。
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp