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T・A・T・O・O ー彫り師ー【気象系BL】

第2章 艶やかなる牡丹の如く


「そろそろ夕餉(ゆうげ)の支度を…」

暫く床で身体を休めた後、智がのろのろと起き上がろうとする、が…

「まだ夕餉の刻まで時間はある。もう少し休んでおけ」

布団を智の肩までかけ直すと、翔は先に身なりを整え始めた。

「でも…」
「良いから…。それに私はこれから明日の支度をせねばならんから…」
「あっ…」

智は、仕事の邪魔をされるのを嫌うことを、良く知っているし、仕事だと言えば、智が大人しく言い付けを守ることも、翔は知っている。

翔は帯をきゅっと締めると、床板に両膝を着き、智の頬に口付けた。

「支度が済んだら起こしてやるから、それまで寝ていなさい」
「では、私が眠るまで傍に…」
「一人寝も出来ないとは、まだまだ子供だな、智は…」

長い髪を指で梳き、耳元で囁いてやると、智は擽ったそうに肩を竦め、それから静かに瞼を閉じた。

そうして暫く頭を撫でていると、智は静かに寝息を立て始めた。

「良い子だ…」

智がすっかり寝入ったのを確かめ、翔は静かに床から離れ、仕事場へと続く襖を開けた。

墨の匂いが立ち込める中、文机の上に半紙を広げ、胡座をかいた格好で腕を組み瞼を閉じる。


さて、どうしたものか…


翔は頭の中で、次に彫る絵図の構想を練り始めた。
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