第11章 募る恋情と、隠せぬ想い
遅めの食事を済ませた智は、久しぶりに根を詰めて仕事をしたせいもあってか、片付けもそこそこに床に入った。
普段ならば、人肌が隣にないとなかなか寝付けない智だったが、その晩は身体を横たえ、間もなくすると不思議と瞼が重くなり…
悠長に休んでる暇など無いのに…
思いはしても、身体がどうにも言うことをきかず、次から次へと襲い来る睡魔に、抗うこともせず身を任せた。
一度も目を覚ますことなく明け方を迎えた智は、いつの間に潜り込んで来たのか、隣で寝息を立てる和也を起こさぬよう、そっと床から抜け出すと、手近にあった羽織を肩にかけ、厠へと向かった。
用を済ませ、土間へと降りる途中で、そっと板間て眠る潤の様子を覗き見た智は、かけていた羽織を肩から落とした。
足音を立てないよう、寝ている潤に歩み寄り、墨を入れたばかりで、赤く腫れ上がった肩にそっと手を触れる。
熱い…
そこは軽く触れただけでも分かる程、熱を持っていて…
冷やさないと…
床板が軋まないよう、静かに腰を上げた智は、桶に汲んであった水に、懐から取り出した手拭いを浸した。
固く絞り、腫れた肩にそっと当ててやると、その冷たさからか、潤の長い睫毛がぴくりと震えた。