第11章 募る恋情と、隠せぬ想い
「あ、あの…」
突然のことに驚き、戸惑い表情を向ける智に、潤は少しだけ…と言って智の肩を抱き、自身の胸元へと抱き寄せた。
「でも…」
言いかけた柔らかな唇を、大工仕事で箚さくれだった潤の指先が塞ぐ。
智はおずおずとした様子で潤の肌に指の先で触れると、墨を入れたばかりの肩に触れないよう、そっと胸元に頬を寄せた。
「辛くはないですか?」
自身の物よりはゆっくりとした胸の音を聞きながら、ゆったりとした口調で問いかけた智に、眉間に僅かな皺を刻みながらも、潤は笑顔を作って見せた。
「父ちゃんの拳骨に比べたら、これしきの痛みなんざへっちゃらさ。それよか今は…」
「え…?」
首を傾げる見上げる智の鼻先を、潤はついさっきまで唇を塞いでいた指で摘んだ。
「あんんの息がかかって、ちょいいとばかし擽ってぇ…かな」
「まあ酷い…」
てっきり鼻息の荒さを笑われたと思った智は、唇を尖らせ、同時に頬を膨らませた。
「あんたでもそんな顔、すんだな?」
初めて目にする智の表情に、潤の目が自然と細くなり…
「柔らけぇな、あんたのほっぺたは…」
するりと頬を撫でた手が智の顎先にかかった。
「あっ…」
潤の顔がゆっくりとその距離を縮め、今にも吐息がぶつかりそうになったその時…