第11章 募る恋情と、隠せぬ想い
みるみるうちに潤の肩は、濃淡様々な色で彩られて行き…
刺棒を置くと同時に、小さく息を吐き出した智は、潤の額に浮かんだ無数の汗粒を手拭いで拭き取った。
轡を外し、乱れた前髪を指で掬ってやると、それまで閉じていた瞼がゆっくりと開いた。
「すっかり夜になっちまったな」
言われて縁側に視線を向けた智は、色鮮やかな潤の肩とは対照的に、宵闇に染まった外の様子に驚き、目を丸くした。
「いつの間に…、あっ…」
時が経つのも忘れ程集中していたことに漸く気付いた智は、慌てて縁側に駆け寄ると、軒先に吊るされていた鳥籠を下ろした。
「ごめんなさいね、お前のことを忘れていたわけではないですからね」
普段よりも僅かに高い声でおすずに語りかけながら、餌を乗せた小皿を籠の中に入れてやる。
「ほら、たんとお食べ?」
まるて待っていたかのように、ちゅんと一鳴きしてから、小さな嘴で餌を啄んだ。
「随分と大きくなったんだな」
「ええ、最近は良く食べるのて、すぐに餌が無くなってしまって…」
眉を下げ、心底困ったような顔をする智に、潤はくすりと笑って手を伸ばした。
「えっ…?」
首を傾げる智に、潤は身体を少しだけ起こし、智の手首を掴むと、強引に引き寄せた。