第11章 募る恋情と、隠せぬ想い
「さあ、煮るなり焼くなり、あんたの好きにしてくれ」
鼻息も荒く言い放った潤は、長い手足を投げ出した。
その姿がまるで大の字と言った様子で、智は吹き出してしまいそうになるのを堪え、予め酒に浸しておいた手拭いを手に取った。
そして、太い物から細い物まで、数十種類はあろうかと思われる針束の中から、丁度中間にある針束を手に取り、蝋燭の火で炙った。
「少し痛むかもしれませんが、もし堪えきれない程てしたら、どうぞ遠慮などなさらずに…」
智は申し訳無さそうに言うが、少しどころの痛みではないことを、潤は身を持って知っている。
だから、実際のところ心中はとても穏やかと言える状態てはない。
それでも潤は智に笑顔を向け、心配するなとばかりにこくりと頷いた。
「ではこれを…」
木の棒で拵えた轡を潤の口に噛ませ、智は精神を統一するかのように、目を閉じ、深い呼吸を何度か繰り返した。
縁側ではおすずがちゅんと鳴き、それを期に智は閉じていた目を見開き、針棒の先に取り付けた針束を、潤の左肩に宛てがった。
ちくり…とした痛みに、潤の眉間に皺が走るが、まだまだ余裕があるのか、針棒を巧みに操る智の真剣な顔を、それはそれはまじまじと見つめていた。