第11章 募る恋情と、隠せぬ想い
「そう…ですね」
暫く考えた後、智はゆっくりと口を開いた。
やはり、少しでも…翔が戻るまでに彫り物を仕上げようと思ったら、潤からの提案に乗るのが、今は最善の策だと考えたからだ。
「ただ、絶対に無理はなさらないで下さいね?」
身体に彫り物を入れると言うことは、その身に何百…いや何千もの針を刺すことになり、当然のことながら相当の苦痛が伴う。
ましてや限られた時の中で…ということになれば、身体に感じる痛みは、通常の数倍にもなりかねない。
「おう、任せとけ…って言いたいとこだけどよ、おいら痛いのには滅法弱くてな…」
「まあ、そうでしたか…」
「でもよぉ、あんたのためなら耐えられるって言うかさ…」
「え…?」
急に頬を赤らめ、落ち着きなく頭を掻き始める潤につられ、智の頬も自然と赤くなる。
「と、兎に角、宜しく頼むわ」
耳まで赤く染め、顔を背けたまま頭を下げる潤に、智はくすりと笑い、「はい」とだけ答えた。
そしてゆっくりとした動きで腰を上げると、施術の為に敷いた布団を整え、潤にそこに横たわるよう求めた。
潤は着ていた半纏を脱ぎ、上半身裸の格好になると、智に言われるまま布団の上で仰向けになった。