第11章 募る恋情と、隠せぬ想い
「待ってくれ」
小さく息を吐き出し腰を上げようとした智の白い手を、潤の節ばった手が掴む。
「実を言うと、この間あんたに会った時から、おいらずっと思ってたんだ」
何を…と、智が聞き返すよりも一瞬早く、潤が一回り近く小さな智の身体を引き寄せ、再び胸の中へと引き込んだ。
「やっぱりあんたに彫って貰いてぇんだ」
「私…に?」
見上げられる格好で問われた潤は、真剣ね眼差しで智を見下ろし、こくりと頷いた。
「あれから、父ちゃんに連れられて他の彫師んとこ行ってはみたんだよ」
「まあ、そうでしたか…」
「でもよぉ、どの彫師も腕は確かなんだろうけど、どうもおいらには合わねぇっつうかよ…」
潤は空いた手で頭を乱暴に搔くと、「だから」と付け足してから、握ったままの智の手に視線を落とした。
「あんたのこの手で、おいらの風神と雷神を完成させて欲しいんだ」
「私の…手で?」
潤と同様に、自身の手に視線を落とす智。
その目の端には光る物があり…
それに気付いた潤は、一瞬困った様子を見せたが、すぐに指の腹で雫を拭った。
「本当に…本当に私で?」
「あったりめぇよ。って言うかよ、あんただってそのつもりでおいらをここに呼んだんだろ?」
図星を突かれた智は、「あっ…」と小さく声を上げてから、言葉なく頷いた。