第2章 艶やかなる牡丹の如く
「ああっ…、どうして…」
首を振って懇願する智に、翔は意地悪く笑ってから、床に流線を描いていた臙脂(えんじ)の帯を拾い上げ、智の両の手首を後ろ手に括った。
「ご無体な…」
「何が無体なものか。その証に…」
翔は智の茎を握り込むと、根元から先端にかけて、すっと指を滑らせた。
それを何度も繰り返すうち、床板にはぽつりぽつりと雫が落ち始め…
「わ、私としたことが、辛抱出来ずにこのような…」
思いがけす達してしまった智は、荒い息に肩を上下させながら、翔の仕事場を汚してしまったことを詫びた。
翔にとって、そこがどれ程神聖な場所なのか、智は幼い頃から言い聞かせられて来た。
それなのに粗相をしてしまったことで、まるで大罪でも犯したような心持ちで…
当然、叱られるものだと覚悟をしていた。
ところが、翔は智を咎めるでもなく、戒めを解くと、軽々と智を抱き上げた。
次の間に通じる襖を器用に足先で開け、敷きっぱなしになっていた寝床に、智をそっと…まるで壊れ物で扱うかのように、静かに下ろした。
「しょ…さん…?」
仰向けに寝かされ、開いた両足の間から自身を見下ろす翔に、智は両手を伸ばした。
「叱らないの…ですか?」
「ほお…、お前は叱られたいのか?」
「そ、そういうわけでは…、あっ…」
言いかけた智の口を塞ぎ、翔は開いた足の奥へと腰を進めた。