第11章 募る恋情と、隠せぬ想い
口を噤み、俯いてしまった智の顔からは、ついさっきまでの凛とした雰囲気は消えている。
和也はそっと智を胸に抱き寄せると、今にも泣き出しそうに上下する背中を擦った。
「分かったよ、それ程までにお前さんはあいつのことを…」
言いかけたその時、庭先から木戸の開く音がして、籠の中でおすずがぱさりと羽根を羽ばたかせた。
「来たか」
背中を擦っていた手がぴたりと止まり、和也は智から離れた。
「和也…」
突然無くなった温もりに、名残惜しそうに手を伸ばす智だったが、和也はこくりとも頷くことなく土間へと下りて行ってしまう。
そして、何やら話し声がすると思ったら…
「智…さん…」
名前を呼ばれ、同時に板間がきしりと軋んだ。
「潤…さん…? ああ…」
言うが早いか、智はまだ上がり端に立ったままの潤に駆け寄ると、まるで我をも忘れてしまったかのように潤の胸に飛び込んだ。
「お会いしたかった…」
「ああ、おいらもだよ…」
「本当…に…?」
智が喋る度、法被だけを纏った素肌に息かかかり、その擽ったさに潤は肩を竦めた。
潤は智を床に座らせると、今にも零れ落ちてしまいそうに溜まった目尻の涙を拭った。