• テキストサイズ

T・A・T・O・O ー彫り師ー【気象系BL】

第9章 余香に彼の人想い、流れる涙


「まあ、そのように恐ろしいことが…」

和也の話に熱心に耳を傾けていた智が、大袈裟なくらいに身体を震わせる。

これまで一人で出歩くことも少なく、常に翔の加護の元にいた智には、想像すら出来る筈もない。

「だからな、いくらお前さんが大丈夫だと言ったところで、ここにお前さん一人残しておくわけにはいかねぇんだよ。分かるな?」
「ええ…」

自身がいかに世間知らずなのかを、今更ながらに悟った智は、嫌悪からなのだろう、団子を手にしたまま俯いてしまう。

そして小さく息を吐き出すと、年の差など殆どない和也を見て、今度は長く息を吐き出した。

暗い表情を浮かべる智。

和也は智の肩に腕を回すと、串に刺さった団子を口いっぱい二頬張って見せた。

「そんな暗い顔しなさんなって。せっかくの団子が冷めちまうぜ?」
「まあ、それは大変…」

智は慌てて団子を口に運ぶと、団子を口に頬張った。

「美味いか?」
「ええ、とっても」
「そっか、そいつは良かった」

言いながら和也は周囲を見回した。

さっきまで茜色だった空は、いつしか夜の帳が落ち始め、ぽつぽつと灯る提灯だけが、辺りを照らしていた。


ゆっくり味わいたいところだか、そうも言ってられねぇな…


悠長に団子と茶を楽しむ智を横目に、和也は縁台から腰を上げた。
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp