• テキストサイズ

T・A・T・O・O ー彫り師ー【気象系BL】

第7章 猜疑と当惑に揺れる心


余程一人で床に就くのが寂しいのか、翔に縋る智の目は微かに濡れて見え…

「分かった。湯浴みを済ませたら、私も直ぐに行くから、待っていなさい」

翔は言い聞かせるように言うと、智の手をやんわりと解き、額にそっと口付けた。

「本当に?」
「ああ、本当だ」

智はその一言に漸く納得したのか、寝間の襖を開け放ったまま、床に就いた。

翔はやれやれと思いながらも、湯浴みの支度を済ませ、風呂場へと向かった。

すっかり温くなった湯に浸かりながら、翔は和也から聞かされた話を思い返した。


私と智が情を交わす関係と知る者はいない。

もし仮に知っていたとして、智を陰間などと言う者がいるだろうか…

第一、陰間わ持つ事など、坊主でもしていること。

私が陰間を持ったところで、誰に咎められることも無いし、ましてや智がそのような扱いをされる筋もない。


翔は再び沸々と湧き上がってくる怒りを鎮めるかのように、両手で掬った湯を顔に浴びせかけた。


さて…、そろそろ上がらないと、また智が寂しがる。


翔は湯から上がると、軽く水気を取っただけの身体に寝巻きを羽織り、智の待つ寝間へと急いだ。

ところが…

寝間に足を踏み入れた瞬間に聞こえてきた寝息に、翔の顔に笑みが浮かんだ。
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp