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T・A・T・O・O ー彫り師ー【気象系BL】

第7章 猜疑と当惑に揺れる心


翔はのろのろと腰を上げ、無数の小石で足場の悪い河川敷に沿って歩き出す。

その後ろ姿は、今にも倒れてしまいそうな程ふらふらとしていて…

「なあ、もう少し休んでからの方が…」

心配した和也が後を追うが、翔は和也に構うことなく歩を進めた。

「なあって…」

翔の腕を掴み、どうにか引き止めようとするが、翔はその手を振り払ってしまう。

「帰らないと…。早く帰ってやらないと…」

まるで譫言のように呟く翔の足は、一歩進むごとに速くなる。


可哀想に…

昌弘が一体何を見聞きしたのかは知らないが、陰間と言われ、心優しいあの子はさぞかし胸を痛めただろうに…


怒りなのか、はたまた悔しさなのか…

これまでに経験した事のない胸の痛みと、目頭の熱さを感じ、何度も足を縺れさせながら、翔はひたすら家路を急いだ。

辺りはすっかり暗くなり、時折すれ違う夜番の夜回り提灯のぼんやりとした明かりだけが、ゆらゆらと揺れる。

その中を、翔は脇め一つも振ることなく駆け、漸く屋敷の門が見えた頃には、翔の息も絶え絶えで…

一刻も早く智の顔を見たい気持ちを無理やり押し込め、翔は井戸から水を汲み上げ、木桶から直接乾いた喉に水を流し込んだ。
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