第7章 猜疑と当惑に揺れる心
雅紀は翔の疲労困憊ぶりに、自分で良ければと、智の世話をすることを申し出た。
自分なら智のことは幼い頃から知っているし、年は少しばかり離れているが、言うなれば幼馴染みのような間柄だからと。
普段は客以外に他人を上げることを嫌う翔だが、身も…そして心も余程疲れきっていたのだろう、翔は雅紀の申し出を有難く受けることにした。
「済まないね、お前にこんなことを…」
「気にすんなって。智のことは俺に任せて、翔の兄貴は休んでくれ」
「ああ、そうさせて貰うよ。何かあったら…」
「分かってるって。だから安心しな」
言いかけた翔の背中を押し、寝間の隣の部屋に押し入れた雅紀は、智の枕元に胡座をかき、額に冷やした手拭を載せた。
そして枕元に置かれた鳥籠に目を移すと、指先を籠の中に入れた。
「お前が〝おすず〟かい? 俺は雅紀ってんだ。よろしくな」
頭を下げ、おすずが指先を啄むのを、擽ったそうに肩を竦めた。
元々生き物が好きな雅紀は、時折おすずと戯れては、甲斐甲斐しく智の世話を続けた。
その間、翔は座敷に横になり、寝間の様子に耳を傾け、意識を向けていたが、やはり相当な疲れが溜まっていたのだろう、気付けば深い眠りについていた。