• テキストサイズ

T・A・T・O・O ー彫り師ー【気象系BL】

第6章 白き手指で描かるる流線


智が深く寝入ったのを確かめ、翔は静かにその場を離れた。

古い道具箱を手に、縁側に座った。

道具箱の中には、もう使わなくなった針束やら、道具の類が入っており、翔はその中から煙管(きせる)を取り出した。

火皿に刻みを乗せ、行灯から分けた火を点ける。

智が嫌がるからと、智の前では滅多に吸うことはないが、一仕事終えた後などには、こうして煙管を吸うのが、翔の密かな楽しみでもある。

翔は煙を燻らせながら、ふと小さな籠の中で囀る雀に目を向けた。

「おすず…だったか? お前にも餌をやらないとな…」

普段は智がおすずの面倒を見ているが、その智が寝てしまった以上、翔が面倒を見る他なく…

翔は煙管を手にしたまま、鳥籠の横に添えてあった小さな壺から、おすず用の小皿に粟の実を少し乗せ、水で浸した。

「ほら、たんとお食べ」

小窓から小皿を籠の中に入れ、おすずの口元まで運んでみるが、どうしたことか、おすずは餌に見向きもしない。

どうやら、おすずは智の手からでなければ、餌を食べることはしないようで…

「やれやれ、困ったものだな」

翔はがっくりと肩を落とすと、籠の中に小皿だけを残し、自身の手を引き抜いた。
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp