第6章 白き手指で描かるる流線
「では、また七日を過ぎた頃に来ると良い」
「お疲れ様でございました」
翔と智は門の外まで出て潤と昌弘を見送った。
すると、それまで随分と気を張っていたのか、智が翔の肩に寄りかかった。
「どうした、疲れたか?」
「ええ、とても…」
智は翔の腕に縋りながら、自然に下がって来る瞼を擦った。
「こらこら、そんなに擦っては腫れてしまうぞ?」
「それは分かっているのですが、堪えられなくて…」
それもその筈、ここ数日、床についても中々寝付けずにいたのだから、張り詰めていた糸が切れた今、その皺寄せが来るのも当然のことだ。
「夕餉まで暫く休むと良い」
「でも…」
言いかけた智を、翔はやれやれと言った様子で抱き上げた。
「お、お師匠さんたら…、ここでは人目が…」
智は翔の肩に腕を回し、辺りを見回した…が、人の姿はどこにもなく…
「このまま私を床まで運んで下さいますか?」
そっと翔の胸二顔を埋めると、甘えた声で強請った。
「しょうのない子だ」
口で言いながらも、満更でもない顔の翔は、智の額に口付けをすると、智を落とさないようしっかり抱き直し、寝所へと運んだ。
布団の上にそっと智を下ろし、顔を見下ろすと、智は既に寝息を立てていて…
翔は智に布団をかけ、寝息を漏らす唇に、自身のそれを重ねた。