第6章 白き手指で描かるる流線
暫く身体を休ませた後、腹当てと半纏を身に着けた潤は、軽く肩を動かしてみる…が、やはり…と言うか、当然の事ながら、皮膚が引き攣れるような痛みに顔を顰めた。
「おいおい、ただでさえお間ぇは痛みに滅法弱ぇんだから、無理すんじゃねぇよ」
「でもよぉ、父ちゃん…」
「でもも糞もねぇ。大人しくしてやがれってんだぃ」
潤にしてみれば、智の手前、少しでも男気のある所を見せたかったのだろうが、自身でも十分過ぎる程分かっていることを、昌弘に言われた潤は、不満げに口を尖らせた
「まあまあ、そう言う昌弘だって、初めて墨を入れた時は、隣近所に響くくらい、大騒ぎをしたじゃないか」
翔が人数分の湯呑みを運び、それぞれの前に置きながら言う。
潤も、そして智も、当然のように驚き、真ん丸とした目で昌弘を見た。
「父ちゃん…が、大騒ぎ…を…」
「まあ…、そんなことが…?」
口々に言われ、昌弘は所在無さげに頭を掻いた。
にも関わらず、翔の口は止まることはなく…
「あの時は、私もまだ不慣れで、どうしたものかと思ったが、それに比べれば、潤坊は随分と大人しいものだよ」
「ええ、本当に…」
智は大きく頷き、潤に微笑みかけ、そして恥ずかしそうに目を泳がせる昌弘を一目見、ぷっと吹き出した。