千銃士【Noble Master Project】R18
第7章 鷹狩り
数日後、オオタカは回復し、こちらが与えた食べ物を食べるまでになった。
羽ばたく練習をたまにしているものの、大空を飛ぶまでにはまだ時間が掛かりそうだ。
「そういえば」
オオタカに餌をやるイエヤスに、沙優は尋ねる。
「どうしてオオタカだって分かったの?」
「ん?……あぁ、徳川家康公が『鷹狩り』を好んでいてな」
「鷹狩り?」
頷きながら、イエヤスはオオタカの身体を撫でる。
「鷹に狩りをさせるのだ。鷹が狩った獲物を、餌と引き換えにこちらが得る」
「へぇ…そうなんだ」
「元気になったら、こやつも狩りが出来るかもしれんな」
「うん、そうだね」
くぅ、と甘えたような鳴き声を上げたオオタカに笑みを零すと、イエヤスはそのまま沙優の手を取った。
「あ……」
「マスター、たまには気晴らしに出掛けないか?」
「……どこへ?」
イエヤスはにこりと笑う。
「案ずるな、そう遠くへは行かぬ」
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「うわぁぁぁっっ!!」
レジスタンス地域近くの非汚染地域、広がる平原を、沙優とイエヤスは黒毛の馬に跨り駆け抜けてゆく。
「マスター、怖いか?」
「うん…っ……ちょっと怖い…!!」
イエヤスは沙優を前に乗せ、手綱を握っている。
「鞍に掴まっていれば大丈夫だ」
耳元でそう言いながら、片腕で沙優の身体をぐっと支える。
「……っ…」
別の緊張感が沙優を支配する。
背中からイエヤスのぬくもりが伝わり、耳元には息づかいが聞こえる。
「……マスター、狩りをするのは怖いか?」
「えっ……」
少し躊躇いが生まれる。
しかし、生き物を狩り、それを食べるのは人間の性でもある。
「大丈夫」
「そうか、できるだけ小さな獲物を狙う」
そう言ってイエヤスは沙優に手綱を握らせ、片手で本体である銃を構えると、平原の彼方へ数発撃った。
「……えっ、もう?」
「あぁ」
イエヤスは再び手綱を握り、獲物のそばへ寄ると馬から降りて1人、獲物を袋へ入れた。
「野ウサギだ」
「……っ…」
「ははっ……そう険しい顔をするな。捌くのも全て俺がやるから、安心していろ」
馬の後ろに獲物の袋を乗せ、イエヤスは沙優の頭を撫でた。