千銃士【Noble Master Project】R18
第9章 ラップ(R18)
昨夜何度も聞いた声。
心臓がドキリと跳ねる。
「おお、ラップか!」
「陛下、そのように抱きしめてはマスターにご迷惑ですよ」
「おおすまんな!つい力が入ってしまった!」
すぐさま腕を解くとナポレオンさんはすっと身を起こして立ち上がった。
「ラップ!食堂へ行くぞ!マスターに奇跡のNoble Kissを贈ったせいで余は空腹だ!」
「かしこまりました、ではこちらへ」
高らかに笑いながら先に部屋を出るナポレオンさんの背中を見送ると、ラップがこちらを見下ろした。
「マスター」
微かにはにかみながら名を呼んでくれる。
「どこか身体が痛んだりはしていませんか?」
「いえ、ラクになりました…ありがとうございます」
「……それはよかった」
するとラップは覗き込むように屈むと、私の髪へ指先を伸ばしてきた。
「……っ…?」
「……しばらくは、髪を下ろしていた方がいいかもしれません…」
首筋に指が添えられ、ぴくんと身体が反応してしまう。
「ラップ…?」
「申し訳ありません、つい歯止めが効かずこのような痕を……」
「……ぁ…っ」
さらにラップの顔が迫り、首筋に唇が寄せられそうになったその瞬間だった。
「ラップ!ラーーップ!!」
「……っ」
遠くで呼ぶ聞きなれた声に、2人で顔を見合わせ思わず笑ってしまう。
「…ふふ……」
「……時間切れのようですね」
ラップの大きな手がぽんぽん、と頭を撫でたかと思うと、彼は踵を返し「陛下へ」返事をした。
冷静沈着な、副官。
笑わない陛下の右腕は、本当は優しく…たまにちょっぴり笑顔を見せてくれる、そんな人だった。