千銃士【Noble Master Project】R18
第7章 鷹狩り
全ての洗濯物を干し終えて踵を返すと、衛生室の入口に誰かいるのが見えた。
誰かを探すように辺りを見回し、こちらを見るや手を振ってくる。
「…マスター!」
声からしてイエヤスだ。沙優は空の洗濯カゴを抱えて駆け寄る。
「イエヤス、どうしたの?」
「その、手当を頼めないか…?」
「えっ……どこか怪我したの…?」
驚きイエヤスを上から下まで見回すが、目立った外傷はない。
「あ、いや…俺ではないんだ」
「……?」
「来てくれるか?」
イエヤスに手を引かれ、沙優は衛生室へと入った。
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「えっ…これは…??」
衛生室のベッドの上にいたのは、予想外の人物…いや、動物だった。
「森の中で弱っているところを見つけたのだ…」
白と茶色が入り交じった羽色の鳥が、ぐったりとそこに横たわっている。
息はまだあるようだ。
「すまない、俺は嗜みが無いゆえ手当の方法が分からぬ」
「……怪我、かな」
「オオタカ、だと思うのだが」
鳥の種類はよく分からないが、沙優はそっと鳥の羽根に触れる。
沙優の指先から、オオタカらしきその鳥の記憶が流れ込む。
数キロ先の平原、空を飛んでいるところに銃声が響く。
何発かの銃声の後、左羽根を弾丸が掠めたらしい。激しい痛みの記憶が流れ込む。
(っ……)
実際痛みを感じるわけでは無いのだが、記憶が錯覚を起こす。
「大丈夫か、マスター?」
「うん、平気。…左羽根を怪我してるみたい…手当してみるね」
沙優は簡単な応急処置を施し、スポイトと水を用意した。
「これで少し水分や栄養が取れたらいいんだけど…」
オオタカのくちばしにスポイトを咥えさせて水を少し送り込む。
すると、喉が微かに動き、水を飲んでくれた。
「ん!……今、飲んだな」
「そうだね…!これならきっと回復するかも」
沙優はイエヤスと顔を見合わせ、互いに笑い合った。