千銃士【Noble Master Project】R18
第6章 キセル(R18)※no shades
泣きそうな顔で、キセルが見上げてきた。
縋るようなその瞳に、沙優は頷く。
「うん。本当だよ……ありがとう、キセル」
「……おっ……俺、お、俺……役に、マスターの役に……立った……?」
「うん」
また視線を彷徨わせるが、「ふ、ふふ……」と笑いながら少しずつ身体の力を抜いていった。
「ふ……ふふふ…よ、よかった……俺、俺…マスターの…君の役に……立ったんだね…」
「うん……」
「あ、あのさ……マスター……その…」
キセルは、言い淀みながら続けた。
「……マスターはその……完全には……回復、してないんだよね……その……Noble Kissは……だから……最後まで……しなくちゃ……マスターのこと、ちゃんと…癒せないんだよね」
「……うん。多分、そう、かな……まだ痣の痛みは…少し残ってる」
「い……痛いの…?」
こくん、と頷く沙優に、キセルは肩を落とす。
「そ、そうだよね……ごめんね……俺が……あと少しのところで……サングラス落としちゃったから………本当に、俺は……役立たずで…肝心な時に……ダメダメで……あ、そうだ……マスター…」
「?」
「俺……もう一度、サングラス……かけるよ。それでまた……最初から、やり直すから……」
「えっ………」
少し離れたところに転がるサングラスに手を伸ばそうとするキセルを、沙優は止めた。
「キ、キセル……今日はもう、いいよ?無理しなくても、ね?」
「……っ……あ、あ……そう、だよね……こんな俺の姿見ちゃったら……もう、ムードも台無しだし……今更サングラスなんかかけたって…ダメ、だよね……は、ハハ……」
「ち、違うのそういう意味じゃなくて……」
「本当に、ごめん……俺は役立たずの最低な貴銃士だ……君のことを癒すなんてこと……できっこなかったんだ」
キセルは自嘲の笑みをこぼしながら、立ち去ろうと身体を起こした。
「………待って…!」
その腕を、沙優の手が止める。
「待って……キセル……」
「マス、ター…?」
「……だめ、かな……今のキセルのまま……続きをお願いするのは…本当に、ダメ…かな……?」
「…………」
二人の間に、重い沈黙が流れる。