千銃士【Noble Master Project】R18
第1章 邂逅
整備されてない、地下道のような長い廊下を抜けると、地下にあるとは思えないほど広い部屋に辿り着いた。
暗い部屋の中には椅子が並び、奥には煌々と照らされた舞台があった。まるで見世物か何かが繰り広げられているような…異様な場所だ。
「全員動くな!!」
恭遠の声に、場は騒然とした。
舞台の上には、派手な服をまとったオーガナイザー、そして『商品』として大きな檻に閉じ込められている少女が一人居た。
「人身売買は違法だ!今すぐこの非人道的行為をやめろ!!」
すると、舞台袖から世界帝軍の兵士が現れた。
「ちっ…やはり奴らが……!」
あっという間に銃撃戦が始まる。
「恭遠、援護する!」
「分かった!あの子だけでも助け出そう」
檻の中にいる黒髪の少女。遠目から見ても、確かにアジア人のような外見をしている。
逃げ惑う人々をくぐり抜け、前方へ近づく。仲間の援護の隙に檻の錠を狙い撃ち抜いた。
キーン!
金属音が響き、錠が落ちる。
「君、こちらへ!!」
中の少女は一瞬怯んだが、こちらを見て扉に手をかけた。
すると、兵士の銃口が少女に向けられる。
「させるか!」
恭遠の放った弾丸は兵士の手元に命中した。
その瞬間に走り出し、銃撃戦をくぐって檻の前までかけつける。
「君、大丈夫か?!」
薄汚れた粗末なシャツを着せられた少女は、目を見開きながらもこくんと頷いた。
近くで見ると、少女と呼ぶには少し憚るくらいの成人女性だ。やはりアジア人は若く見えるらしい。
「我々は反政府組織…レジスタンスだ。君を保護し、安全な場所まで案内す……」
恭遠は彼女の手を引き、檻から出そうとした……その時だった。
「…………えっ……」
はだけたシャツから覗いた鎖骨の下…
白い肌の、その場所に。
「君……これ………」
恭遠の指先が触れようと伸ばしたその瞬間……
「恭遠!!急げ!!!」
仲間の声が遠くから聞こえた。
見れば、世界帝軍の増援が駆け付けてくるところだった。
(くそ…まずは脱出が先だ!)
「逃げるぞ……!」
恭遠は伸ばしかけた指先を彼女の手に絡めた。
「………はい…っ」
初めて聞いた、彼女の声。
凛として……美しい、透き通るような声だった。
やまぬ銃撃の嵐を抜け、恭遠は仲間と共に会場を離脱したのだった。