千銃士【Noble Master Project】R18
第1章 邂逅
「人身売買?」
恭遠は、街へ潜伏調査に行っていた仲間からの報告に顔をしかめて聞き返した。
「激化する貧富の差によって、ヤミの人身売買が横行してる。世界帝軍は直接関与していないものの、買っているのは世界帝軍と繋がる金持ちばかりだ」
「悪趣味なところも似ている、ということか…」
そう呟いてふと、誰もいない左側に視線を落とす。
もし彼がいたなら、こんな話を聞いてすぐ
「何たる下劣な行為だ!けしからん!今すぐ成敗するぞ!ラップ!!出撃の準備だ!!」
なんて言い出すだろう。
……そんな彼の姿はここに、ない。
「…俺たちだけでそのヤミ市場を潰せるだろうか」
「それはやってみないと分からんな……これは余談だが、アジア人の純血種が近々高値で取引されるらしい。お前の母の故郷出身かもしれないな」
「日本、か……」
極東の国、日本。
経済力と科学技術力を持った日本は、いち早く世界帝軍の手に落ちた。元々の人口減少により純血の日本人は殆ど存在しないと言われている。
「……人種に関わらず、やはり人身売買などという卑劣な行為は見過ごせるものでは無い。我々だけでも装備を整えて乗り込もう」
恭遠の決定に仲間は頷き、作戦室は久しぶりに活気を取り戻したのだった。
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あの戦いから3年。
古銃たちの手入れを欠かしたことは1度もなかった。
武器を徴収された我々にとって
古銃たちは最後の砦だ。
そして、マスターはレジスタンスの希望だ。
きっとまたいつか
マスターは現れる。
(次にマスターに出会えた時には)
もう死なせない。
恭遠は目を閉じて、手にしていた銃を握りしめた。
ナポレオン。
君と共にいれば、死なずに帰れる気がするよ。
裏通りの地下、バーの奥にある隠し扉の向こうに、秘密のオークション会場があるらしい。
レジスタンスの仲間たちによってバーは既に占拠した。奥の会場はもう袋のネズミも同然だ。
「行くぞ!!」
他の仲間たちと共に、恭遠は中へと乗り込んだ。