千銃士【Noble Master Project】R18
第2章 目覚め
直訳すれば「高貴な口づけ」であるが
これは、いわば貴銃士の高貴な魂をマスターに注ぐ「癒魂術(ゆこんじゅつ)」である。
高貴な魂を注ぐだけなので、貴銃士自身が何かを消耗することはないのだが
絶対高貴に目覚めた貴銃士にしか成しえない技だという。
その具体的な『方法』を知った恭遠は、それをマスターに実践することを躊躇っていた。
しかし
もう、2度とマスターを失うことはできないのだ。
次にマスターを……沙優を失ってしまえば、おそらくレジスタンスに勝ち目はない。
だが、沙優は……この『方法』を受け入れてくれるのだろうか。
そして、こんなことを強いる我々を…許してくれるのだろうか。
(人としては……最低なことを、させるんだな、俺は)
そんな自責の念に目を閉じていると、作戦室に呼び出した貴銃士たちが集まってきた。
「恭遠、待たせたな!すまん!」
ナポレオンの声。後ろに控えるラップが軽く会釈をして入ってくる。
「皆集まっていたか」
「アラ、マスターはいないのネ?」
イエヤスとフルサトもやってくる。
間をおかずにアレクサンドルとマフムトもやってきた。
「マスターは連日の貴銃士召喚で少し疲れているようだったから、部屋で休ませている」
恭遠のその言葉に、一同は表情が曇った。
「そうネ……前の、マスターは……それが原因だったわネ…」
「いや、余がいれば百人力!もう2度と同じ過ちは起こさぬ!」
「陛下、前マスターの際も陛下はいらっしゃいました。ここは冷静に恭遠の話を聞きましょう」
6人の貴銃士の目が恭遠に向けられる。
恭遠は大きく息を吐き、そして話し始めた。